Lord Mantis の Death Mask 所感
書いておきたくなったのでメモがてら書いてみる。
概要
スラッジメタルバンド Lord Mantis の3rdアルバム。
スローテンポで少し複雑なリフを何度も何度も聞かせ、不安感を煽るスタイル。スローで拍子がおかしい感じが良い。
ボーカルは取りつかれたようにひたすら叫び続ける。なりふり構わず叫んでる感が出ていて◎
ドラムは一打一打ひたすら丁寧に叩いている印象。特にラス曲のイントロではその特性がよく活きている気がする。
ところどころ入るギターのノイズ的な音や各種効果音が非常にいい味を出している。
良いところ
特筆すべきはラス曲に全てを持っていくアルバムの構成。
1~3曲までの密室で男が叫んでいるような聞きにくい展開。
4曲目の退廃的で美しいインストで一度静かに聞かせる。初めて聞いたときはここに惹かれた。まるで密室から脱出した男が廃墟になった街を見て佇んでいる感じだ(妄想)
5曲目でさらに真正に狂った感じでスローテンポで再び叫び始める感じが絶望感を煽る。
6曲目での不気味なタメの後、ラス曲へ。
全体の流れが秀逸すぎて、アルバムを通しで聞いた後は旅をして色々な景色を見てきたかのような充足感に包まれる。
殺気立つ一音一音から、アルバムに注いだ情熱を怖いほど感じる。
各楽曲について
1、冗長なギターのイントロが、これから始まる長い旅を思わせる。イントロのどこから聞こえているのかわからない叫びが、不安感を煽る。ひとしきりリフを回した後の突然の暴走が心地よい。
暴走した後のリフが、重苦しいメロディを絡めていて◎。このリフかっけえ。そのまま何度も繰り返して聞き手の耳に張り付く感じが気持ち悪くて◎。
そして暴走前のリフに戻る。
2、1曲目の雰囲気をそのまま引き継いだ曲。3分辺りからの長い疾走と、その後のリフの流れが良い。ここらへんのギターのノイズもよい。
そして最後のリフ。ボーカルが店舗に合わせて合わせてひたすら犬の呼吸をするところが良い。最後の銃声が恐ろしい。
3、第一部の山場。これまで以上に繰り返しを多用し、気持ち悪さを引き立てている。ラストセクションのパーカッションの効果音が良い。ギターのノイズも入ってきて、同じフレーズを繰り返しても飽きない。ここでのボーカルの繊細に計算された狂気っぷりは目を見張るものがある。ここで不快感がMAXになる。
4、退廃的なインスト。風の音のような効果音が屋外を思わせる。初めて聞いたときはここで胸を鷲掴みにされた。美しい。
5、束の間の休息の後、またボーカルが叫び始める。一度前曲で安心したあと、また突き落とされる。テンポがさらに遅くなっているのが落ちに落ちた感があって非常に良い。
3分辺りの、徐々にテンポアップからの疾走の流れがとても良い。
6、タムを多用したドラミングと、ある種念仏にも似た雰囲気のあるリフが良い。そこにボコーダーの乗ったボーカルが乗ると、完全に常軌を逸しつつも美しい世界感が垣間見える。
7、アルバムの終点。イントロから終点感が漂っていて非常に良い。これまでの全ての曲展開に支えられたこのイントロの雰囲気は、圧倒的なものがある。
2分10秒からのセクションが最高。このリフのに似合う景色を探しに旅に出たい程に良い。
全てを浄化すような、壊すような、天に還すような雰囲気がたまらない。
重苦しいリフを挟み、また浄化リフが来る。絶望感の中にあるからこその美しさというか、カタルシスというか、言葉にしがたいものを確実に表現している。
本当の美しさは、本当の救いはこの中にあるのではないかという錯覚にさえ陥らせてしまう程恐ろしく美しい。
からの疾走パート。残った邪悪をまといつつまた走り始める感じがする(妄想)。ベースが活き活きしていてとても良い。
疾走しながらも、不気味で密教的な白玉フレーズと、犬呼吸ボーカルが良い感じ。
総括
自分のアルバムというものに対する認識を変えた作品。
聴き終わった後、小説のような読後感(聴後感?)が残る。時間と心の準備をしないとなかなか通しでは聞けないアルバムだが、ぶっ通しで聴くと単体で聴くよりも何倍もの快感を味わうことができる。
ラス曲に似合う景色は未だに探している。
※なかなかの音なので、この手のジャンルに慣れてない人は注意して聞いたほうが良いかもしれない。